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「個人が尊重される社会を」LGBTQ差別やSNSでの誹謗中傷を減らす活動に取り組む学生団体Cue代表の「志」

「個人が尊重される社会を」LGBTQ差別やSNSでの誹謗中傷を減らす活動に取り組む学生団体Cue代表の「志」

どんな時代にも社会課題は存在する。しかしその課題を「自分ごと」として捉え、解決するために行動できる人はどれほどいるのだろうか。2021年に日本労働組合総連合会が行った、15~29歳1,500名に実施した「Z世代が考える社会を良くするための社会運動調査2022」(https://dime.jp/genre/1343973/)によると、「社会課題に関心がある」と回答した若者は8割以上に及び、その割合は年齢が若くなるほど増え、高校生が中心となる15歳~19歳に至っては、9割以上が社会課題に関心があると答えている。その関心の先は「いじめ」、「長時間労働(ワーク・ライフ・バランス)」、「自殺問題」、「ジェンダーに基づく差別」、など多岐に渡る。これからの時代を担う新たな世代の若者たちが、どのような経験から社会課題に関心を持ち、行動を起こしているのだろうか。そしてその奥底にある想い、「志」とはどのようなものなのか。社会課題の解決に若い力で挑んでいるZ世代の若者たちへのインタビュー。


#01

柴田花菜

Shibata Hana
情報経営イノベーション専門職大学1年/学生団体Cue代表/私を表すタグ#タフ#猪突猛進#人の笑顔が原動力/実は空手有段者/成長することに夢中になっています

LGBTQ差別やSNSでの誹謗中傷をなくし、一人でも多くの人をより笑顔にしていく


インタビュアー

津田好明

Tsuda Yoshiaki
京都在住。長年教育業界に携わりながらキャリア教育の推進に努めている。
キャリアコンサルタントとして社会人へのインタビュー活動を行い、主著に「動けば変わる」。ゆめや志を掲げた写真を集めてモザイクアートを作成するHOKUSAI志モザイクアートプロジェクト実行委員長。

多様な価値観を考える「きっかけ」を届けたい

本日は、LGBTQ差別やSNSでの誹謗中傷を減らすことを目的として活動している、学生団体Cueの柴田花菜さんに来ていただきました。よろしくお願いします!

よろしくお願い致します。

早速ですが、花菜さんの志を教えてください。

私の志は、「LGBTQ差別や偏見、SNSでの誹謗中傷で傷つく人を減らし、一人でも多くの人をより笑顔にしていくこと」です。差別といっても、いろいろ捉え方や難しいところがあると思うのですが、私は、その人の価値観や正義感に縛られて、壁や区切りをつくってしまうことではないかと考えています。そういった差別や偏見、誹謗中傷などで傷つく人たちを減らしていきたいという想いを持って活動しています。

そのような世界を実現していく、具体化していくためにどういった目標や計画を立てていらっしゃるのでしょうか。

目標は、多様な価値観を知る「きっかけづくり」をすることです。今年の2月に「学生団体Cue」を立ち上げて、4月から本格的に活動し始めたのですが、「きっかけ」というところにフォーカスして活動しています。「Cue」という団体名の由来は「きっかけ」という意味なんです。多様な価値観や、ありのままでいいよね、十人十色だよねという考えを知るきっかけづくりを行っていければと思っています。

そのための活動として、今年は、ショートムービーを撮影しています。具体的な内容についてはまだ公開できないのですが、十人十色、ありのまま、人それぞれ、といった多様な価値観を認めることをそのムービーを通して伝えるということにチャレンジしたいと思っています。

ショートムービーを撮影するCueの皆さん

それ以外にCueの活動として、中学校や高校での講演会を行っていきたいと思っています。中学生や高校生は思春期まっただ中で、人格形成や価値観形成において重要な時期であるということが統計からも出ていますし、私自身のこれまでの体験からもそう思っています。中学生や高校生に、多様な価値観を知るきっかけを届けることで、その子たちが大きくなった時に、多様な価値観を認め合える社会づくりが行われるといいなと思っています。

さらに、2024年には、法人化にチャレンジしてみたいと思っています。理由は、単純に私が起業に興味があることと、私がいま掲げている差別・偏見・誹謗中傷というテーマは、ビジネスにすることが難しい、社会課題を解決するソーシャルビジネスの分野だと思っているからです。だからこそ、法人化にチャレンジして、より強い使命や影響力をもって、自分の想いや夢を社会に大きなインパクトを与える形でやっていけたらと思っています。

また、今後、イギリスに留学して、LGBTQやジェンダー教育の先進国で学んでいきたいです。ごちゃ混ぜになってしまいましたが、今後の計画をこんなふうに考えています。

毎日の1on1で自身の考えをブラッシュアップ

いろいろな活動を考えていますね。これらの目標に向けて、今実際に行われている活動を教えてください。

私個人の活動指針は、毎日新しい知見を得ることや新しい視点を発見することを大事にしています。例えば、Twitterで出会った方と毎日一人ずつ1on1をさせていただいて、自分の想いを伝えたり、逆にいろいろな考え方やフィードバックをもらうことで、より違う視点から物事をみる力を養いたいと思っています。

毎日行動されているんですね。花菜さんがいろいろな方と1on1などでお話していて、特に印象に残った考え方やできごとはありますか?

そうですね、LGBTQの当事者の方と話した時に、「正直、あまりLGBTQの人にちょっかいを出さないでほしい。」と言われました。「自分にとっては自分であることが普通だから、社会一般で言われているように、壁を作るものでもないし、LGBTQってそんなに特別視するものではないよ。」って言われた時に、「あ、そうか。私自身がLGBTQという壁を作って、差別とか偏見だって捉えすぎていたのかもしれない。」と気づくことができたのが印象に残っています。

なるほど。ついつい、LGBTQの当事者だと聞くと、何か自分にできることはないかなと考えてしまいますが、そう考えること自体が特別視をしているということですね。私も今お話を聞いていて、なるほどな、と思いました。

その方とお話したことが、「ありのまま」とか「個人の個性の尊重」ということに、フォーカスした考え方にシフトしていくきっかけになりました。

私のきっかけは、大好きな友人が当事者だったこと

そもそも、花菜さんがこういった活動をしていきたいなと思ったきっかけはあったのでしょうか?

私がLGBTQという言葉を知ったきっかけは自分でもよく覚えていないんですけど、アクションを起こそう、社会を変えようと思ったきっかけが一つあります。

あるとき、友人とご飯を食べながら恋バナをしていました。私が「付き合っている人いるの?」と聞いたら、彼女には7年くらい付き合っている人がいると。そこで私が「え、すごいね。結婚できるじゃん。」ってお話ししたんですよ、そしたら彼女が、「実は、付き合っている相手は女性なんだよね。だから結婚はできなくって。けど結婚したい。だから花菜ちゃんが総理大臣になって同性婚認めてよ。」って言われたんですね。

それが自分にすごく刺さって。そのお話を聞いた上で、友人がこれまで受けてきた差別的な発言だったり否定的な言葉で苦しんだ過去を聞いて、目の前に大好きな人がいるのに、なにも力になれない自分の無力感とか、社会への怒りが、彼女と話したことで湧き上がってきました。「まずは友人を笑顔にしたい、大好きな人の力になりたい。」ということを強く思い、「じゃあ私が動き出そう。」と決意しました。

そうだったのですね。多様な価値観を受け入れ、認めていくことって実際には難しいこともあると思います。どのように多様な価値観を認めて、尊重していくという想いに人々を巻き込んでいるのか、そのあたりお聞かせください。

まずは「隣の人のことを知る」ことが大切だと思っています。私にとってその友人がきっかけだったこともありますし、友達が当事者だったとか学校でそういう教育を受けてきたとか、自分の周りの近くにいる人を知るということから、差別や偏見が少しずつでも減っていくきっかけが生まれるといいなと思っています。

すごく伝えたい想いとしては、「人それぞれだよね、ありのままだよね、十人十色だよね。」っていう個性を尊重する考え方を伝えていきたい。だからこそ、LGBTQという、社会でいわゆる性的マイノリティと呼ばれる人たちがいるよ、っていうことを知ることがまず大事だし、それを知ったことでお互いに理解し合って共存していく、認め合える社会を目指すことが大切なのではないかと思います。

その人の個性を尊重する世の中に

今花菜さんが差別や偏見を減らしていくという活動をしている上で、大切にされている考え方はなんですか?

例えばいわゆるTiktokとかって結構、顔で評価されたりするじゃないですか。言ってしまえば、顔のレベルで誹謗中傷される人を見ていて、例えば「ぶさいくだ。」とか「かわいいと思ってるのか。」とか。でもそれってその投稿者が好きで踊っていたり動画をあげていたりするのだと思うので、それで誰かを傷つけているわけではないし、その人がやりたくてやっているだけなのだから、その人の個性として尊重すればいいじゃん、という考え方が広まることで、人を傷つけるコメントって少しずつ減っていくんじゃないかと思います。

差別や偏見というところに関しても、例えば、「自分は異性愛者だけど、あの人は同性愛者なんだ、気持ち悪い。」じゃなくて、「あの人は同性が好きなんだ、その人はその人だからそれでいいよね。十人十色だよね、世界に70億人もいて、同じ人ってなかなかいないよね。」っていう価値観を認め合うことで差別や偏見、誹謗中傷というものが少しずつ解決に繋がっていくんじゃないかと私は思っています。ですから、個人の尊重という考え方が大事になってくるんじゃないかと思います。

なるほど。たしかに、個人の尊重というところがベースになり、それぞれの違いを認めていける社会になるといいですね。では、最後の質問です。例えば差別や偏見、誹謗中傷で傷つく人が少なくなった社会、いなくなった社会を想像してみたとき、花菜さんはどんな気持ちでどんなことをしていきたいと思いますか?

一気に頭が虹色になりました。虹色が大好きで、「いろいろな色がある、いろいろな人がいる」というのが好きなんです。その時自分がどんな気持ちかって想像すると、「絶対的に楽しい!」と思いました。「この人おかしい、とかちょっとこの人合わなさそう。」といった壁をつくっている状態からその壁を取っ払って、お互いを認め合う社会があたりまえになったときに、自分が思っているより多くの人と繋がることができるようになるんですね。

「だから、圧倒的に今のこの差別や偏見、誹謗中傷がある社会は、どうしても人とつながりにくい社会になっている。その壁が取っ払われた時に、人脈とか、人とのつながりが増えると思うので、そこで生まれる新しい出会いや新しい人達と繋がり、今よりもっと何倍も楽しくなるんじゃないかな。」と感じました。

個人の尊重をベースとした繋がり、本当にそれぞれのよさや個性が輝きだす社会になるんじゃないかなと、花菜さんの志が響いて、自分もワクワクしました。本日はお話を聞かせていただきありがとうございました!!

ありがとうございました。

※この記事は、インタビュー動画を書き起こし、一部編集したものです。
▼元のインタビュー動画

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この記事を書いた人

KOKOROZASHIマガジン編集部